(「ポルトガル・リスボン」からつづく)
リスボンにやってきたからには、見逃せないのはアルファマ地区である。
18世紀の大地震で倒壊せずに残った地区で、いまでも狭い道が入り組んだ旧市街だ。よく、ここは「下町」と呼ばれるのだが、実際は丘の上にある。
さて、実際に足を踏み入れて、そのあまりに生き生きとした旧市街らしさに、私はかなり興奮してしまった。当時、まだアルファマ地区は「危ない」だのなんだのと言われていたが、そんなことはなく、むしろ活気に満ちた生活を実感できたのである。
それにしても、人間が生きるには、これくらいの道幅がちょうどいいかもしれない。自動車が走らない町は、やはり人間様中心の場所であると感じた次第である。
だが、さらに驚いたのは、そんな路地の中にも、路面電車が通っていることであった。電車がやってくると、狭い歩道の上で、平べったくなって通過するのを待たなくてはならないのである。
そして、アルファマ地区といえば、ポルトガルの演歌ともいえる「ファド」の中心地としても知られている。どこかのレストランか飲み屋でファドの生演奏をやっているという話は聞いていたが、なにせ私は貧乏旅行者であった上に純情だった。ただでさえディープなアルファマ地区にあって、地元の人にまじってそんな酒場に行くなんて思いもよらなかったのである。
その後、ポルトガルを訪れることがないままに25年もたってしまった。その間に、リスボンでは万博が開かれ、ポルトガルはEUにも加盟している。リスボンの町や人の姿も、だいぶ変わってしまったことだろう。
それでも、リスボンは、ぜひもう一度行きたい町である。次回は、リスボンに1週間くらいは滞在して、毎晩、薄暗い酒場に出かけてはファドを聴くことにしよう。
2006年4月作成
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