ポルトガルの首都・リスボンを訪ねたのは、まだ20代のなかばだったときのことである。イタリアでの短期の語学講座受講を終えて、列車でスペイン南部を経由し、国境にある川を小さなフェリーで渡って、ポルトガルに入国。
信じられないほどゆっくりと走る長距離列車に乗り、夕刻のリスボンの駅を降りると、改札の外では、若者たちが争って荷物持ちの仕事を求めていた。
思い起こせば、ナホトカ駅でシベリア鉄道に乗車してから4か月近く。展望台から大西洋を遠く眺めながら、陸路でユーラシア大陸の西端にたどりついた感慨に、一人ひたっていたのであった。
リスボンの町は、クリスマスを控えて活気に満ちていたのだが、どこか洗練されずに泥臭いところは、なんとなく昔の東京を思わせた。
2日ほどの短い滞在だったが、観光地らしきところも見ずに、ただひたすら町を歩きまわった私である。そして、名物の路面電車に乗り、ケーブルカーにも乗りまくった。
イタリアやスペインにくらべて、町の雰囲気も人の様子も地味なのだが、そこがまた深く印象に残っている。感受性の強かった年代だからかもしれないが、このときのことを思い出すたびに、いまでも懐かしさに心がしめつけられるのである。
(「リスボン・アルファマ地区」につづく)
2006年4月作成
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