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5万分の1の地図を片手に、北から南まで時刻表にない鉄道を求めて歩いていたころ。 地図に軌道跡はあっても、行ってみると何もないといった空振りは数知れず。たとえ遺物を見つけても、たいした「発見」ではないという場合も多かった。 ここでは、そんなお蔵入りの写真や、たいして珍しくもない写真を中心に収録。「時刻表にない鉄道を求めて」のコーナーの番外編として、地方別に紹介することにした。 |
■日本鋼管ライトスチール熊谷工場専用線 1969/08 | |
中学の上級生に連れられて、高崎第一機関区に蒸気機関車を撮りに出かけたときのこと。乗っていた普通客車列車が、籠原で急行(たぶん佐渡)退避のために長時間停車をした。 そのときに、近くの線路から貨物列車が発車するのが見えたので、思わずカメラを向けたのがこの写真である。 |
機関車は2両とも日立製のB-B式で似たような車体だが、足回りがまったく違っている。前の車両はコイルバネ付きの近代的なもので、後ろの車両はロッド式。 これが、日本鋼管ライトスチール熊谷工場の専用線と知ったのは、ずっとあとのことである。『世界の鉄道 '70』(朝日新聞社)によれば、動力車はこの2両のみだったそうだ。 車番は、1両目が「DL 30-02」と読める。2両目は不鮮明だが「DL 30-01」と思われる。 |
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貨車に積まれているのは、鋼板をコイル状にしたものだろう。当時は専用線のディーゼル機関車など珍しくなかったから、軽い気持ちで車窓から見たままを撮っただけである。 今の時代とは違って、あまり記録されることもなく、ひっそりと廃止されたようだ。 |
■福島臨海鉄道 1977/10 | |
東北地方の蒸気機関車を撮ってきた帰り、常磐線の上り列車に乗って泉駅に近づいたところで、福島臨海鉄道の線路が見えてきた。列車が通るといいなあと思ってたら、運よく小名浜方面に向かう列車がやってきた。 牽引機はDD501。すでにこの機関車は廃車になっているが、路線は2019年現在、運行を続けており、沿線には家が立て込んできた。 |
■駒形石灰専用線 1977/12 | |
栃木県葛生にある住友セメント専用線を訪ねたときのこと。同じ葛生にある駒形石灰にも足を向けてみた。 すでに専用線は廃止されたとは聞いていたが、跡が残っていないかと思ったからだ。 |
案の定、本社の片隅に、加藤製作所の機関車2両が放置されていた。 手前(上の写真では左側)が3.5t、向こう側が4.8t機。 その後、4.8t機は駒形石灰の構内に保存されたそうで、3.5t機も埼玉県鳩山町の公園に保存されているという。 詳しくはこちら。 |
鉱車も放置されていた。こちらも現在は保存されているそうだ。 路線は1975年ごろには使用されなくなったそうで、私が行ったときにはすでにレールははがされていた。 |
■千頭森林鉄道(跡) 1972/10 | |
ジャコビニ流星群が空振りに終わり、大井川鉄道で冒険したあとは、奥泉駅で下車してバスで寸又峡温泉に立ち寄った。 5万分の1の地図を見ると、千頭森林鉄道の路線が派手に描かれていたが、もちろんすでに廃止されており、線路跡をぶらぶらしただけではレールも何も見つからなかった。 |
それでも、寸又峡温泉の入口にこんな車両が保存されているとは知らなかった。 2018年現在も無事に車両は保存され続けているようだが、ネットの写真を見ると、車体はどちらも違う色に塗られている。 |
これは、大井川鉄道の千頭駅構内に放置されていた千頭森林鉄道のの人車。 枠組しか残っていなかったので、こんな構図にしてみたのだが、1枚はまともに撮っておくべきであったと反省。 |
■黒姫山麓の森林鉄道(跡) 1974/08 | |
5万分の1の地図を見ていたら、黒姫駅の西側から軌道の印が伸びているのを発見。木曽森林鉄道撮影の行きがけに、立ち寄ってみた。 とはいえ、かなり昔に廃止になったようで、跡形もなくなっている。それでも、短い水路を渡る地点に、何か痕跡がないかと思って歩いていくと……。 こんな線路らしきものを発見! 貧弱な枕木がついたままである。 |
周囲は一面の畑。このあと、しばらく付近をうろついていると、地元の農家の人に「何をしているの」とにこやかに尋ねられたい。 当時は、鉄道趣味でさえ認知されていない時代、ましてや森林鉄道跡を探っているなどとはいえず、「いや、列車待ちの間に散歩をしているんです」と答えた高校生の私であった。 |
正直に白状していれば、何か耳寄りな情報が得られたのではないかと、思い出すだに残念である。 21世紀になって刊行された『近代化遺産 国有林森林鉄道全データ 中部編』(信濃毎日新聞社)という本によれば、1907年度に開通したとのことだ。 この写真は、レールがあった地点から見た黒姫山の夕景。 |
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