鞍馬駅で発車を待つデナ122。改造前の優美な姿である。 入母屋造りの鞍馬駅と周囲の木々がよく調和している。 |
-- 洛北を走る小さな電車 -- 叡山電鉄は、京都市の北部にある出町柳から、鞍馬や貴船、八瀬遊園といった洛北の観光地に向かう路線である。出町柳~八瀬比叡山口の叡山本線と、その途中の宝ヶ池から分かれて鞍馬に至る鞍馬線からなっている。 私がこの路線をはじめて利用したのは、高校の修学旅行。「路面電車」のコーナーの「京都市電」と同じときである。当時は、京福電気鉄道の京都支社によって運行されていたが、その後、1990年に叡山電鉄に分社化された。 この路線の魅力は、なんといっても古典的な車両が、丁寧に手入れをされて走っていることだった。 そこで、わが修学旅行のグループでは、私の独断によって貴船神社、鞍馬寺が見学地に加えられ、帰りは八瀬遊園駅(現・八瀬比叡山口駅)から乗車して宿に戻るというコースが組まれたのである。 訪問:1973年11月 |
鞍馬駅の改札風景。詰め襟の駅員の姿がりりしい。 「WAY IN」「乗車券ハ出札ニテ オ買求メ願イマス」という標記、そしてベンチの「ポマード」が泣かせる。 |
八瀬遊園駅(現・八瀬比叡山口駅)のデナ501。ときあたかも紅葉真っ盛りの季節であった。 集電機器にポール(厳密には、先端が回転しない「スライダーシュー」)が使われていることに注目。 |
デナ501は阪神電鉄からやってきた車両である。古い車両だが、ニス塗りの内装が磨き上げられ、いかにも手入れが行き届いているという印象だった。 |
1973年当時の乗車券 |
高校の修学旅行のついでということで、結局撮った写真はこれだけである。もう少しがんばってもよかったのにと思っても後の祭り。 それにしても、古典的な電車が当たり前のように走っていたのには、ちょっとしたカルチャーショックであったと同時に、「さすが古都」と感激したものだった。ただ古くてボロいだけの車両は、まだ日本のあちこちに走っていたが、手入れが行き届いていたのが気持ちよかった。 この後、スライダーシューはパンタグラフに置き換えられ、このとき走っていた車両はすべて廃車となってしまった。しかし、現在では代わりに「きらら」のようなユニークな車両が登場しているのはうれしい。 ちなみに、「デナ」という記号の意味だが、「デ」 は電動車、「ナ」は中とのこと。このほかに「デオ」という車両があり、「オ」は大型を示す。そういえば、ナとオについては、国鉄・JRの客車の重量区分にも同様のものがある。 ところで、鞍馬の駅も八瀬比叡山口の駅も、昔とほとんど変わっていないということので、こんど時間ができたときに、ふらりと行ってみたいなあ。青春時代の思い出を振り返りながら……なんてね。 |
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