日本で発行されているイタリアのガイドブックを見ると、ナポリからシチリアまでの間のティレニア海側(西海岸)は、ほとんど空白地帯になっている。しかし、この爪先にあたるカラブリア(カラーブリア)州には、ほかの州に劣らない素敵な町が点在しているのだ。 もっとも、観光施設や英語表記が整っていないために、外国人観光客にとってはかなり敷居が高い地域といっていいかもしれない。 そんななかで、比較的イタリア初級者にも行きやすいのが、ここシッラ(Scilla)である。大都会レッジョ・カラブリアから幹線を走る列車に乗れば、わずか30分弱。アスプロモンテの山とティレニア海にはさまれた狭い土地にへばりついているかのようなシッラの町にたどり着く。 高速道路はシッラの町を避けて、はるか山側を走っている。鉄道も、町の南側でようやく外に顔を出すだけ。だから、わざわざここで降りない限り、この町の素晴らしさに触れることはできないのだ。 |
キアナレーア地区の小さな港。翌朝、ここで太刀魚の水揚げを見た。 2004.10 |
この町は、城砦の岬を境に2つの地区に分かれている。砂浜の広がるマリーナ・グランデ(Marina Grande)地区と、漁港があるキアナレーア(Chianalea)地区だ。 |
キアナレーア漁港の桟橋は、日がなおしゃべりをする人たちがいたり、釣りをする人たちがいたりして、実にのんびりした雰囲気であった。 2005.11 |
伝説によれば、シッラのもとになった町はトロイア人の亡命者が建てたとのこと。ホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』に登場する6つの頭を持つ怪物スキュラ(Scylla)は、このシッラの岬の崖に住んでいたとされる。現在のシッラという地名も、この怪物の名前と関連があるのだろう。 |
▲マリーナ・グランデの海岸から高台に登る階段。 2004.10 |
▼港の細い道といえば、もうネコの天国だ。 2004.10 |
さて、時は下って2005年の晩秋、私が妻とこの町に1泊して朝の散歩をしているときのこと、日本に行ったことがあるという60代後半とおぼしき地元の男性に出会った。 |
▲シッラの夕景。オデュッセウスは、いまは城砦のあるこの崖の近くで、6つの頭を持つ怪物「スキュラ」に襲われたのだという。 2004.10 |
▼カジキと格闘する漁師の像。展望台近くにあった。 2005.11 |
●所在地 カラブリア州レッジョ・ディ・カラブリア県 ●公共交通での行き方 ・レッジョ・ディ・カラブリア中央駅からパオラ、サレルノ方面行き列車で所要30分弱。 ●見どころ ・マリーナ・グランデの砂浜と丘の上にそびえたつ城砦。 ・キアナレーアの海岸にへばりついて建つ家々。 ・展望台から見える海岸線と、シチリアやエオリア諸島の姿。 ●老婆心ながら 目の前の漁港で水揚げされる海の幸は最高。イタリアのどの町で食べたものよりも新鮮だった。 |
マリーナ・グランデとメッシーナ海峡の夕景。この時間、展望台は町中の年寄りで賑わう。写真奥はシチリア島。 2004.10 |
2006年5月作成 |
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